50代からの人生は「消化試合」じゃない。ドラッカーの問いで“第二のステージ”を準備する—トークイベントレポート

「このまま会社に身を委ね続けていいのだろうか」
50代を迎えた頃、ふとそんな問いが浮かぶ瞬間があるかもしれません。
役職定年、定年後の暮らし、転職の現実味、副業の遠さ。
そして何より「自分の経験はこの会社の外でも通用するのか」という不安。
1月24日に開催されたトークイベントでは、こうした50代の“言葉になりにくい焦り”に対して、真正面から向き合うヒントが語られました。本レポートでは、『50代からの人生をマネジメントするドラッカーの問い』著者である鵫巣さんの講演を中心に、当日の様子をお届けします。
「定年後20〜30年」を“消化試合”にしないために
第一部の鵫巣和徳さんによる講演では、まず、長寿化によって「人生後半」がこれまでと全くの別物になったことが、強い危機感とともに語られました。
かつては、定年と平均寿命が近い時代でした。だから「定年後は余生」という感覚でも成り立った。しかし今は違います。定年後も20年、30年と人生が続く時代に入っています。
長寿化の変化にもかかわらず、私たちはその変化に薄々気づきながらも、第2のステージへの準備を後回しにしがちです。鵫巣さんは、ベストセラー『LIFE SHIFT』の印象的な一節を引きながら、「長寿化の進行は“途方もない変化”であり、準備できている人はほとんどいない」と指摘しました。
印象的だったのは、定年制度を「年齢を理由とした解雇」と表現したことです。
言葉としては強いですが、「いつ起こるかわかっている出来事なら、準備できるはずだ」というメッセージでもありました。
人生後半の準備は「答え探し」ではなく「問い探し」
「老後資金の作り方」「起業の方法」「趣味の見つけ方」など、世の中には人生後半に関する“答え”が溢れています。しかし鵫巣さんは、そこにこそ落とし穴があると言います。
人によって状況は違う。誰かの成功例をなぞっても、自分に合うとは限らない。大切なのは「正しい答え」よりも、「正しい問い」を持つこと。ドラッカーの言葉として紹介されたのが、
『重要なのは正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。』
という一節です。
つまり人生後半の準備とは、情報収集の前に「自分にとっての問いを立て直すこと」なのだと。
そして鵫巣さんが強調したのは、人生後半のスタート地点は「自分という存在を深く知ること」だという点でした。
勢いで飛びついて失敗するケースが多いのは、自己認識が不足したまま“答え”に行ってしまうから——という指摘は、50代の「焦り」と「行動の空回り」に刺さる内容でした。

「俺の経験は潰しがきかない」—50代のリアルをどう越えるか
第二部のトークセッションでは、Dialogue for Everyone(セカンドキャリア塾)代表の大桃が登壇し、現場で見てきた50代の葛藤を共有しました。
大桃が紹介したのは、企業でよく聞く50代の本音です。
- 転職なんて考えられない
- 役職定年後、どうしよう
- 副業は遠い
- 何かしたいけれど、どうしたらいいかわからない
大桃はこれを「会社にキャリアを預けてきた“就社世代”」の構造的課題だと捉えます。
本人の経験スキルが下がったわけではないのに、ある年齢を境に自信が揺らぐ。ここに、50代のキャリアのしんどさがあります。参加者からも深い頷きがありました。
50代が“社会で活きる”瞬間は、協働の中から起こる
セカンドキャリア塾が提供するのは、キャリアデザイン研修と「大人のインターンシップ(越境学習)」。特に象徴的だったのが、北海道の農業生産法人との協働事例です。農場でカブに病気が発生し、大量廃棄が起きていた。そこで「品質管理工程を作りたい」という課題に対して、大手メーカー出身の技術職(品質管理のプロ)がオンラインで伴走し、品質工程づくりを支援したそうです。
ここで重要なのは、農業の知識がなくても出せる価値があるということ。価値が出たこと。
会社で培った「当たり前」が、業界が変わると“強み”として立ち上がる。この体験が、参加者の自己認識を変えていきます。
実際に、インターンシップ受け入れ企業側の満足度は96%、参加者の行動変容は90%というデータも示されました。
Do/Haveではなく、Beから考える——50代の「転換点」
トークでは、セカンドキャリア塾が大切にする視点として
「Do・Have起点から、Be(ありたい姿)起点への転換」が提示されました。
これはまさに、肩書き・実績・スキル(Do/Have)だけで次を決めようとすると、選択肢が狭まり、“今の延長線”から出られなくなるという問題意識です。
実際に、インターンシップがうまくいかないケースとして、「副業が目的化しているパターン」が語られました。
“副業をすること”がゴールになってしまうと、結局は「今の延長でできることしかやりたくない」と視点が狭まり、結局踏み出せなくなる——というリアルな話は、耳が痛い人もいたかもしれません。
逆に言えば、「残りの人生でどうありたいか(Be)」を言語化していくと、越境の経験が“探索”として機能しやすい。50代の転換点は、ここにあるのだと感じさせるセッションでした。

「答え」ではなく「問い」を持ち帰る——今日からできる第一歩
イベント全体を通して一貫していたのは、50代のキャリアに必要なのは「正解」ではなく、「自分の問いを取り戻すこと」だということです。
「この先どうしたらいいかわからない」と感じた参加者もいたかもしれませんが、無理に答えを急ぐ必要はありません。今持ち帰るべきなのは、こんな問いかもしれません。
- 自分の人生後半を“余り”にしないために、何を準備する?
- 「会社の肩書」がなくなった時、私は何者として生きたい?
- これからの20年、誰のために、何に貢献したい?
人生後半は長い。だからこそ、焦らず、しかし先送りせずに。
第二のステージを「余りの時間」で終わらせず、「自分で選ぶ人生」に変えていく——その出発点が、問いなのだと感じる時間でした。





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