一緒に取り組むことで、漠然と考えていた品質管理工程が形になった/夢想農園代表 堀田隆一さん

海道士幌町と音更町の広大な農地で野菜を栽培する夢想農園。3代目代表の堀田隆一さんは、主力作物である白カブの病気を防ぎ、品質管理を強化したいと考えていました。

セカンドキャリア塾のインターンシップでそんな堀田さんの“伴走者”となったのが、大手化学メーカーで品質管理を担当するSさん(50代男性、東京出身)です。堀田さんは課題を解決するため、主にオンラインでSさんとやり取りしながら白カブの品質管理工程を作っていきました。「1人では課題を解決することが出来なかった」と語る堀田さんにインターンシップの感想を伺いました。 

 

1人で考えず、2人で話し合ううちに“希望の光”が見えてきた 

北海道帯広市から北に約30キロ、士幌町に拠点を置く夢想農園は、士幌町と音更町にある40ヘクタール(約40万平方メートル)の農地で、ジャガイモやテンサイ、白カブ、水菜、パクチーなどを育てています。従業員は、パートを含めて約30人。堀田さんは、2018年に前代表の父親から事業を継承し、生産・販路の拡大に努めてきました。そこで直面した課題が、主力作物である白カブの品質管理です。 

「漬物店などに白カブを販売しているんですが、お客様にお届けするまでに腐ってしまったり、(見た目がきれいでも)切った時に黒い斑点があったりするということがありました。そうなると商品価値がなくなってしまいます。切ったら中は白いし、腐っている部分もないというカブをしっかり作り続けたいと思ったんです」 

堀田さんは白カブが病気となるリスクを減らし、安定生産できるようにするために品質管理を強化したいと考えましたが、1人で考えていてもなかなか良い案が浮かびませんでした。

そんな時に、知人から「大企業の品質管理のノウハウを農場に落とし込めるのではないか」というアドバイスを受け、セカンドキャリア塾のインターン生を受け入れることを決断。オンラインでインターン生のSさんに悩みを打ち明け、話し合ううちに“希望の光”が見えてきたそうです。 

「私は普段の作業工程や仕事のルーティンを何気なく話していたんですが、Sさんはその一つ一つに対して『なんでこの作業が必要なんですか』『その作業をやるのなら、こういうことを図式化してみれば良いのでは』などと、作業をする意味や必要な工程についてひも解いてくれたんです。父の代に決まり、自分自身で考えなかったり、現場で感覚的にやっていたりしたことについて改めて考えることができました」 

異業種だからこそ、同業者に話せないことも相談できた 

インターンシップは白カブの収穫時期(6~10月)など農園の繁忙期を避けて、2022年1月から3月まで、主にオンラインで行われました。農業に従事する堀田さんと、大手化学メーカーの品質管理を担当するSさん。異業種同士の組み合わせではありますが、やり取りで違和感はなかったのでしょうか。 

「あまり違和感はなかったです。畑を何反作っています、と言った後で『こういう言い方じゃ伝わらないんだな』と思うぐらい。Sさんはおそらく農業に詳しくなかったと思いますが、(Sさんの仕事との)共通点を探って答えを返してくれました。そうしたやり取りを通して、自分の中でなんとなく考えていたことが見えてくる、形になってくるという実感がありましたね」 

農業のプロフェッショナルではないSさんだからこそ、他の農家に相談できないことも包み隠さず話し、課題や解決策を突き詰めていけることもあります。堀田さんは、Sさんと打ち合わせを重ね、農園が抱えている課題を整理していきました。その中には、自分1人では気づけなかったこともあります。 

「最初は漠然と選果場(収穫した野菜や果物を大きさや色、形などで仕分けし、箱詰めする場所)の中での行程表のようなものを作るのかなと考えていましたが、Sさんと話していくうちに、もっと大きくとらえないといけないなと気づいたんです。種をまいてから、収穫して、お客様への発送を終えるまでを全て工程としてとらえて、どこに何をアプローチしたらいいのかを考える。今まではトップ1人の感覚でやっていたものを全体で共有できる形にした方が、リスク回避ができるということが見えてきました」 

(打ち合わせ中の堀田さんとSさん)

Sさんの存在が、課題に向き合うモチベーションに 

白カブの品質向上のため、品質管理に取り組まなければならないと分かっていながら、日々の業務に追われて手が付けられなかったという堀田さん。しかし、Sさんの存在が課題に向き合うモチベーションになっています。 

「(課題は)宿題みたいなもので、期限がないと、やらなきゃと思っていても結局やらずにシーズンインしてしまいます。1人ではなかなかストイックに打ち込めないこともあるので、Sさんがいてくださるだけで全然違います。1日1時間でも、やれなかったことに取り組めていることがありがたくて。やったことでその先に行けるので、今年できなかった部分はまた来年という感じで少しずつ進めていっています」 

Sさんに対し、「やるに越したことのないことを一緒に付き合ってくれているんだから、こんなにありがたいことはない。ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝える堀田さん。

インターンシップを通して策定された白カブの品質管理工程は現場で活用されることとなりました。インターンシップ終了後も夢想農園とSさんとの関係は続いています。Sさんは2022年夏に農園を訪問。白カブの収穫工程で農園のスタッフと一緒に黄色くなった葉を取り除く作業などを経験し、品質管理工程の改善点を探りました。今後はSさんが現場で見つけた改善点をもとに、さらなる工程の改良を進めていきます。 

●メールマガジン登録はこちらから
(最新情報やセカンドキャリアへのお役立ち情報を配信中)
https://dialogueforeveryone.com/mailmagazine/