40年の大企業経験は、社外でどう活きるのか? ―石膏鋳造の現場で見えた「当たり前」が価値になる瞬間 ― 戸塚 功さん(株式会社ニコン)

40年以上、大企業でキャリアを積み重ねてきた戸塚功さん。
60歳を迎えたときは、「65歳で引退するだろう」と思っていたと振り返ります。
実際に65歳の定年を目前にした時、「まだまだやれるな」 そう感じ、頭をよぎったのが次の問いでした。
「自分がこの会社の外に出たとき、何ができるのだろうか?」
ニコンという看板を離れたとき、自分の経験は本当に通用するのか。
そんな思いを胸に参加したインターンシップ体験についてお聞きしました。
定年を前にした「自分探し」
戸塚さんは、販売、調達、本社部門など、ニコンで幅広い業務を経験してきました。しかし、それらはすべて「会社の役割」の中での経験。社外の企業と、利害や立場を越えて向き合ったとき、 そこにどんな発見があるのかを確かめてみたかった、と言います。
これまで、複数人で企業課題に取り組むグループ型越境研修にも参加してきました。その上で、今回取り組んだ「企業と1対1で向き合う」形式について、戸塚さんはこう語ります。
「経営者とダイレクトにやり取りすることで、社内の事情もより深く理解できる。やりがいも感じられました。この形が、一番自分に合っていると感じました」
石膏鋳造の現場に立ち、まず“見る・聴く” ― 与えられたミッションの、その先へ
インターン先は、山梨県都留市に拠点を置く有限会社モールドモデル。
高精度な石膏鋳造という特殊技術を強みとし、試作やオーダーメイド品を手がける、ものづくり企業です。 (インターン内容詳細はこちら)
オンラインで進むプログラムながら、戸塚さんは最初の打合せで「ぜひ現場を見たい」とリクエストしました。
工場を歩き、作業の流れを眺め、 壁に貼られた進捗管理表や作業伝票に目を向ける。
その時、様々な役割で長年ものづくりに携わってきた経験が、自然と使えると感じたそうです。
「このやり方だと、品質や納期で苦労が出てくるかもしれないな、と感じる部分がありました」
会社の“足元”にある課題が、自然と目に入ってきたのです。インターンシップ当初のミッションは、 「新たな販路開拓のための市場調査」でした。しかし結果として、品質管理や営業人員の確保など、テーマは徐々に広がっていきました。

会社での打合せの一コマ。中央が戸塚さん
「正論」よりも「相手の優先順位」を尊重する ―伴走者としての距離感
戸塚さんは、気づいたことを一方的に押し付けることはしませんでした。
「大企業での感覚をそのまま持ち込んでも、それがその会社にとって“今やるべきこと”とは限らない」
実際に、工場管理に関する提案については、 先方の関心や優先順位を踏まえ、途中で深追いしない判断もしています。 一方で、モールドモデル側から持ちかけられた相談もありました。それが、営業体制の強化という課題です。
「若手をいきなり採用するより、 一度ベテラン人材を入れて業務を整理し、 その後に若手につなぐ方がいいのではないか」
戸塚さんは、OB人材の活用を提案し、 募集要項の作成や採用プロセスの設計まで関わりました。 結果的に採用には至りませんでしたが、経営者と同じ目線で悩み、考え、選択肢を一緒に探る時間そのものが、 「とても楽しかった」と戸塚さんは振り返ります。
「こんなに学んできたんだ」 ― 社外で気づいた、経験の“応用力”
「40年以上ニコンで働き、その中で多くのプロジェクトに関わってきた中で、 知らず知らずのうちに、柔軟性や応用力が身についていたんですね」 今回のインターンは、戸塚さんにとって自分の経験を客観的に見つめ直す機会でもありました。
さらに、モールドモデルの事業理解を深めるため、 若い頃に学んだ機械図面の読み方を学び直す場面もありました。
「自分は、まだ勉強できるんだな、そう思えたことも大きかったです」
「嫌われてもいい」からこそ、言えること ― 外部だからできた、本質的な対話
インターンという立場は、戸塚さんにとって特別なものでした。
「仮に嫌われたとしても、後々の利害関係はありません。 だからこそ、本気で考えたことを伝えられる」
社内のようなしがらみがないからこそ、 経営者が普段は聞きにくい視点も、率直に投げかけることができました。 目の前の課題だけでなく、会社全体を俯瞰して捉え、提案する。
そこには、「この会社が良くなるように」という 戸塚さんの一貫した信念がありました。
ミドルシニアへのメッセージ ― 環境を変え、内省し、言語化する
最後に、これから新たな挑戦を考えるミドルシニア世代へ、 戸塚さんはこう語ります。
「同じ会社、同じ部署に長くいると、 自分の長所や短所に気づきにくくなります。 だからこそ、環境を変え、違う人と接することが大事なんです」
そして、このプログラムの価値は「体験」だけではないと続けます。
「振り返って言語化することで、頭が整理され、経験が自分の中に刻まれる。 このプロセスが、次につながると感じました」
越境し、内省し、言葉にする。 そのサイクルが、自分でも気づかなかった価値を浮かび上がらせてくれる。
「これは、60代に限らず、 どの年代でも意味がある経験だと思います」

職場での飲み会の様子、左手2人目が戸塚さん




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