「小さな積み重ねが、ものすごく大きなリターンとして返ってきました」/大森ガーデン(有限会社十勝大森牧場)営業部主任 大森謙太郎さん
北海道広尾町の老舗草花ナーセリー(花苗の育成農場)の大森ガーデン(有限会社十勝大森牧場)では、コロナ禍でガーデニングがブームとなる中、オンラインショップを開設しましたが、なかなか手が回らない状況でした。
そこで、セカンドキャリア塾のインターン生、Yさん(40代女性、東京在住)を約1カ月間、インターンシップで受け入れることに。
担当した営業部主任の大森謙太郎さんは、当初は不安もありましたが、Yさんと共にこつこつオンラインショップの改善に取り組んでいったところ、自分でも驚くほどの成果が現れました。大森さんにインターンシップの感想を伺いました。
オンライン面談でインターンへの不安を払拭
北海道・十勝地方、日高山脈のふもとにある大森ガーデンでは、1000品種以上の宿根草(毎年花を咲かせる植物)を扱っています。丈夫でローメンテナンスな宿根草は、アマチュアからプロのデザイナーまでに人気で、色とりどりの草花が植えられたガーデンには、多くの愛好家や観光客が訪れます。大森さんは知人の紹介を受け、セカンドキャリア塾のインターンシップを活用することにしました。
「候補に挙がっているインターン生の方々は、かなりハイスペックな経歴をお持ちでしたので、だいぶロースペックな当社に来てもらうことに心配もありました。しかし、オンラインでお話ししたYさんは当たりの柔らかい方で、私が理解しにくい言葉もかみ砕いて、分かりやすく説明してくれました」
当時、外資系IT企業でマーケティングに従事していたYさん。「普段の業務で担当する機会がないB to Cの経験を積みたい」という思いから、自身が好きな草花に関わることができるインターンシップへの参加を決めました。
「緑、グリーンは商材としては特殊で、好きな気持ちがないと上手に扱えないんじゃないかなと思っています。ですから、緑がすごく好きなYさんは、当社としてもありがたかったですね。当社のこともちゃんと分かってもらえる方だということが分かりました」
1カ月のオンラインショップの売上が前年比2倍に
Yさんは2021年8月から9月のインターンシップで、大森ガーデンのオンラインショップの改善やSNSの運用、東京都内での営業サポートなどに取り組みました。同社とのやり取りは主にオンラインで行い、家族と一緒に1週間、現地にも滞在しました。オンラインショップの改善では、商品の品ぞろえを見直し、おすすめや価格、入荷順で商品の表示順を変えられるようにしていきました。顧客にとって使いやすく、品切れの防止にもつながる仕様にしたのです。
「もともとはホームページ制作会社と相談しながら作った通販サイトですが、私にあまり知識がなかったこともあり、当社の希望と完成したサイトとの間に微妙なずれが生じていました。そこをYさんが間に入ってホームページ制作会社と交渉し、すり合わせてくれたんです。グーグル検索などで上位に入り、お客様が流入して購買につながるよう、サイトの仕組みも整えてくれました」
SNSについては、アカウントを持ちながら、うまく活用できていませんでした。Yさんは担当者である60代の専務に、オンライン会議ツールなどを利用してガーデンや花の写真をアップする方法やハッシュタグの付け方などを説明。ウェブサイトの解析ツールを用いて、SNSでのPRが実際の購買にどうつながっていくのかを大森さんや専務らに解説しました。
「これまでもSNSにガーデンの様子をアップしていましたが、それがどのような結果につながるのか数字で分かっていませんでした。Yさんが『SNSにアップしたらこういう流れでお客様がショップに流入して、こういう苗を買っていきますよ』と数字で示してくれたのは、大きな発見でした」
これらの取り組みを続けた結果、Yさんがインターンシップに来た翌月の売上は、前年比の2倍にまで跳ね上がりました。東京在住のYさんが、都市部にも多いオンラインショップユーザーのニーズをつかみ、サイトの仕様に反映していったことも成果を後押ししました。
「小さな調整を一つ一つ積み重ねていった結果、ものすごく大きなリターンとして返ってきたので本当に驚きました。当社の社長や専務も、オンラインショップやSNSについて『SNS運用の成果が分かった』『何をどう頑張ったらいいのかが見えてきてすごく良かった』と話していました」
「大森ガーデンの新しい可能性を引き出してくれた」
大森さんとYさんは、大森ガーデンの新たな可能性も模索していきました。その一つが、グラス類をガーデニング雑貨のショールームに飾ることです。Yさんが同社と北欧のガーデニング雑貨を扱う商社をつなぎ、どのような植物をどういった形でディスプレイしていくのかも考えていきました。
「当初は想定していなかった業務でした。当社は園芸ユーザーに対する商品づくりをしていましたが、Yさんは全然違うベクトルから、『こういうこともできるよ』と示してくれました。実際に商社と掛け合ってくれて、取引してみましょうというところまで話をつけていただいたのでうれしかったですね」
Yさんが大森さんに提案した案件の中には、会社の方向性との違いから取り組まなかったものもありました。Yさんはそんな時も「その選択肢は正しいと思います」と大森さんの意向を尊重する姿勢を崩しませんでした。
「対等な関係というか、『一緒に頑張っていきましょう』というのがYさんのスタンスでした。インターンシップは1カ月でしたが、初めからフルスロットルで来てくれて、うちも頑張ろう、頑張ろうと追いかけていった感じですね。自分たちが見えなかったことを掘り下げてくれたり、単純にやりたくでもできなかったことをできるように導いてくれたりと、最初から最後まで非常に良い形で仕事ができました」
インターンシップ終了後も、Yさんは業務委託という形で大森ガーデンに関わっています。今後の展望について、大森さんに語ってもらいました。
「昨年、大きな造園工事がなかった逆風の中で、当社が売上を伸ばせたのは、Yさんのインターンシップがきっかけだったと感謝しています。また当社は、花の苗をお客様にお届けして、お庭やベランダで育ててもらうことが多かったのですが、Yさんはディスプレイとして植物を扱うという大森ガーデンの新しい可能性を引き出してくれました。また新しい世界を一緒に見ていけたらと思います」
執筆者:南 文枝
1979年、石川県生まれ。同志社大学経済学部卒業後、北國新聞記者や毎日新聞記者、IT企業広報を経て、2013年からフリーライター。現在は兵庫県小野市在住。「Yahoo!ニュース」や「DG Lab Haus」などのインターネットメディア、雑誌などで関西を中心に行政や企業、地元の話題など「地方発」の記事を執筆。医療関係者向けウェブメディア「m3.com(エムスリーコム)」で地域医療の話題にも取り組む。
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