定年後の過ごし方について本を読んだり考えていても前に進まないと気づいた。会社の看板を外したインターンシップで、新しい社会との繋がりを獲得/5期生 吉田睦さん(59歳)

吉田さんは長年IT業界で勤務され、来年定年を迎えるにあたって、会社という看板と、社会との窓口がなくなったら何ができるだろうかを模索する中でセカンドキャリア塾に参加されました。インターンシップ先は熊本県人吉市で200年の歴史のある老舗お茶屋さん。会計システム導入のアドバイスを通じて、新しい人脈を作ることができたと言います。

※上記写真は吉田さんが熊本県人吉市を訪問された際の一コマ(吉田さんは上段左端)。インターンシップ先の立山商店の皆様と熊本県人吉市の大人の社会塾「ひとよしくま熱中小学校」の皆様と共に。

定年後の生き方については、どんなに本を読んでいても先に進まない

来年、定年なのですが、55歳を過ぎたころから「定年後どうしていこうか」とずっと考えてはいました。本を買って読んだりもしたのですが、やはり切迫感がなくて、結局斜め読みするだけでちっとも前に進みませんでした。そんな時に会社で「セカンドキャリア塾」というプログラムが公募されているということを知り、会社に一生懸命アピールして選んでもらって参加することができました。

定年後のセカンドキャリアに関しては、考えなくていけない事がいろいろあるということは、なんとなく本の斜め読みで感じてもいたので、まずは一回、自分の棚卸をしてしっかり自分を見つめ直す機会になればいいと思っていました。

プログラムでは毎回宿題がでるので、とにかくその宿題を必ずやって参加するということで、本を読んでいたときには実行できなかったことを一通り全部きちんとできたことは、非常に助かったと思っています。

インターンシップ先は熊本人吉の老舗お茶屋さん

前半のプログラムが終了した後、インターンシップ先として熊本県人吉市にある、200年続く立山商店さんをご紹介いただきました。

歴史のあるお店でウェブ販売もしっかりとされているのですが、経理の帳簿が手作業で処理されていて、その部分をシステムに移行するにあたってのアドバイスが欲しいということでした。ご存じのように23年から24年にかけて、電子帳簿保存法やインボイス制度など、法改正により対応が迫られているわけですが、「何をしていいかわからない」とのご相談をいただいたのです。

経理システムを新規に導入することだけが目的ではなく、少ない人数で経理をされているので、その省力化を目的に、システムの選び方からお手伝いさせていただきました。

(インターンシップ先の立山商店さん)

初回打合せは現場を見て理解したいと思い、1泊2日で人吉へ

インターンシップでのやり取りは、基本的にオンラインによるリモートで進めたのですが、ご提案していくに際して最初はリアルにお会いして、現状の様子をお聴きし、背景情報を教えていただくべきだと考え、人吉まで1泊2日で行ってお話を聞いてきました。

人吉は初訪問。3年前の豪雨災害によって球磨川が氾濫した爪痕がまだ残っており完全に復旧していない中で、お会いした皆さんがとても明るく一生懸命に頑張っている姿も見ることができて、とても勉強になりました。それ以降は、リモートでご提案することができました。

実は、今もお手伝いしている途中です。インターンシップは2ヶ月間で一旦終了しましたが、「システムを入れたらそれでおしまい」ではなくて、本格稼働までちゃんとやりたいと思い、今もプロボノとして関係は続いています。電帳法の施行が1月スタートなので、ラストスパート、急ピッチに進めているところです。

(人吉に訪問した際に稲刈り体験に参加)

会社という看板を外した後に、何ができるだろうか

インターンシップを経験する前に考えていたことは、「会社の看板を外してどれだけできるのか」ということでした。現在勤めている会社では、社名だけ言えばあとは細かい説明をしなくても信用してもらえるわけですが、セカンドキャリアではそういう看板はないのですから。

でも今回、インターンシップ先の方は、ITに関して知識のない方だったにもかかわらず、ちゃんとこちらの提案を聞いていただき、ご納得いただけたので、その点では自信になった部分はあったと思います。

逆に苦労した点で言えば、私の本業が忙しく時間のやりくりが困難だったためにシステム導入が遅れてしまったということがあったので、時間管理には苦労しました。もっときちんとタイムマネジメントする必要があると大いに反省し、同時に本業の仕事の組み立て方から考え直すいい機会となりました。

同期生との交流や、インターンシップ先での人脈の広がりなど、大きな収穫があった

何といっても前半のプログラムでやった「自分の棚卸し」がとてもよかったと思います。

これをやる前には、自分のやりたいこと、やるべきこともわからなかったのですが、このプログラムを通じて自分のやりたいことや望むことを整理できたことはとても大きな収穫となりました。
また、一緒に参加されていた他業種の方々との会話を通じて、人から与えていただくのを待つのではなく、自分で考えて自分の道を決めないといけないということがよくわかりました。私の発表に対して、エールをいただいたりいろんなアドバイスをいただけたことは本当によかったと思います。

そして、最後の卒業式ではリアルでお会い出来た方もいて、すでに副業で個人事業を立ち上げてスタートされている方もいらっしゃって、そういう方とお話しできたというのもよかったですね。

また、インターンシップ先の方はとても地元でお顔が広く、「ひとよしくま熱中小学校」など地域活動や関係者の方をご紹介いただけたので、秋にもまた人吉に行って新たなパイプができたことも、とてもいい財産になりました。

(セカンドキャリア塾 卒業式でのワークショップ。同期メンバーと共に。)

自分で考えるきっかけがつかめ、インターンシップを通じて新しい社会とのつながりを実感できた貴重な体験

もうひとつ、今回の体験で感じたことは、会社というのは広い社会との窓口であって、定年後に会社を離れてしまうとこの窓口がなくなってしまうので、一から新たに窓口を作ることはとても大変だと思います。そういう意味ではセカンドキャリア塾のようなプログラムに参加することによって、新しい社会とのつながりを作れると実感できたことは素晴らしい副産物で、とても感謝しています。

このプログラムは決して何か与えてくれるものではなくて、プログラムを通じて自分ができること、すべきことをもう一度見つめ直し、自分で気付くことができるということが素晴らしくて、そうした自分の経験したことを、もし、入塾を迷われている方がいたらお声がけしてお薦めしたいと考えています。